私がともペンを始めた理由
初めて木軸ペンを手にしたときの感動を、今でも鮮明に覚えています。
そのペンは、これまで使ってきたどんな筆記具とも違っていました。
手に取ると、自然素材ならではのぬくもりが伝わり、指先が優しく包み込まれるような感覚がありました。表面のなめらかな仕上がりは、木目の美しさを際立たせ、まるで自然の恵みがそのまま手元に宿ったかのようでした。そして、実際に文字を書いてみると、驚くほど心地よい書き味でした。ペン先が滑らかに紙の上をすべり、適度な重みがあることで、無理なく手にフィットする――まるで自分のために作られたかのように、しっくりとなじむ感覚があったのです。
「こんなに書きやすく、こんなに心地よいペンがあるのか!」
思わずそう呟きながら、その一本のペンに夢中になりました。それは単なる筆記具ではなく、書くという行為そのものを楽しくさせてくれる「相棒」のような存在でした。私はこの感動を誰かと共有したくなり、もっと木軸ペンについて知りたい、使ってみたいという欲求が次々に湧いてきました。
「自分でも作ってみたい!」という衝動
木軸ペンの魅力に気づいた私は、その奥深さを知るうちに、「自分の手で作ってみたい」という気持ちを抑えられなくなりました。
調べてみると、木の種類によって色合いや香り、質感がまったく異なることがわかりました。例えば、ヒノキはほんのりと優しい香りがし、持つだけでリラックスできるような不思議な魅力があります。一方で、ケヤキは木目が美しく、耐久性に優れ、力強さを感じさせる。松は軽くて持ちやすく、樫の木は硬く、しっかりとした握り心地がある。
「木は生きている――一本一本に個性がある」
そう気づいたとき、私はさらに興味をかき立てられました。既製品を使うだけではなく、自分の手で削り、磨き、形にしていくことで、世界にたった一本の、唯一無二のペンを生み出すことができるのではないか。
そして、もしそのペンが「書くことが好きな人」にとっての大切な一本になったとしたら?もし「今まで普通のペンしか使ってこなかった人」が木軸ペンの良さに気づき、そこから新たな書く楽しみを見出してくれたら?
そう考えると、もうじっとしていられませんでした。
私は、一本の木軸ペンがもたらす「感動」をもっと多くの人と分かち合いたいという強い思いに駆られ、自らの手で木軸ペンを作り、販売することを決意しました。
「社会に貢献できるペンを作りたい」
しかし、単に「自分が作りたいから」という理由だけでともペンを始めたわけではありません。
木軸ペンには、ただの筆記具以上の可能性があることに気づいたからです。
私は、日頃から福祉や支援に関心があり、精神保健福祉士の資格も持っています。その中で、高齢者や手の不自由な方が「書くこと」に苦労している場面を何度も見てきました。
一般的なボールペンやシャープペンは、細く、軽く作られているものが多いですが、それが必ずしも「使いやすい」というわけではありません。特に、握力が弱い方や、手に障害を持つ方にとっては、細いペンは逆に持ちづらく、しっかりと握るのが難しいのです。
そこで私は考えました。
「太軸の木軸ペンなら、握りやすく、長時間使っても疲れにくいのではないか?」
実際、木軸ペンは一般的なプラスチック製のペンよりも太めに作られているものが多く、適度な重みもあります。そのため、少ない力でしっかりと握ることができ、自然と手にフィットするのです。さらに、木材の温かみがあることで、ペンを持つこと自体が心地よい体験になります。
「このペンが、高齢者や手の不自由な方の『書く楽しみ』を取り戻すきっかけになればいいな」
そう思ったとき、私は確信しました。ともペンは、ただの筆記具を作る事業ではなく、「人と人とのつながりを生み出す活動」なのだと。
「感動をより多くの人とシェアしたい」
一本のペンが生み出す、あたたかい手書きの時間。
デジタル時代の今だからこそ、「手で書くこと」の大切さを改めて感じてもらいたい。心を込めて文字を書く楽しさを、多くの人に伝えたい。そして、それが誰かにとっての「特別な一本」になれば、こんなに嬉しいことはありません。
「書くことが楽しくなるペンを届ける」
それが、私がともペンを始めた理由です。
これからのともペンの目標
今後は、もっと多くの木材を試し、それぞれの特性を活かしたペン作りに挑戦したいと思っています。また、より幅広いニーズに応えるために、名入れサービスやギフト用のパッケージなど、特別な一本として大切にしてもらえる工夫もしていきたいです。
そして何より、「ともペンを使ってみてよかった!」という声を、一人でも多くの方から聞けるように、品質と使いやすさを追求し続けます。
ともペンが、誰かの「書く楽しみ」を支える一本になりますように――。
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